#02 日々の暮らしと自然をつなぎ直す

セッション2:日々の暮らしと自然をつなぎ直す

10月29日(土) 14時00分〜15時30分
 
地域の魅力は、何といっても自然との距離の近さです。豊かな自然は、人びとの生活の質の向上に役立つばかりか、新しいアイデアを含めクリエイティビティの源泉になるとも言われています。とはいえ、実際に地域の様子を見てみると、まだまだ周囲にある豊かな自然環境を、日々の暮らしや社会の中に十分取り込めていない現状も見えてきます。
 
ローマクラブが『成長の限界』と題する報告書を提出したのが1972年。あれから半世紀がたちました。やはり、地球は有限だったのです。最近では、自然にも資源・エネルギーにも「限りが有る」ことを痛感する機会が増えています。世界は、環境問題の視点からも、資源・エネルギー問題の視点からも「転換点」にあると言えそうです。
 
私たちは、今、地球の自然環境をどのように捉えるべきなのでしょうか。今よりも、自然と人間社会との関係性 をより近いものにし、「収奪の対象としての自然」から、「共生しつつ恵みを分けてもらう自然」へとシフトしていくにはどうしたらよいのでしょうか。
 
本セッションでは、南極の昭和基地での越冬隊としての経験も豊富で、人類の火星居住可能性を探る国際研究プロジェクトに日本人として参加し、数々のミッションを成功に導いてきた村上祐資さんと、松本市森林再生会議の座長を務め、自らも林業会社の社長として「森(里山)と街をつなぐ」数々のプロジェクトを手がけていらっしゃる原薫さんとで、人間社会と自然との関係性をどのようにしてつなぎ直していくことができるのか議論していきたいと思います。
 
【登壇者】
  • 村上祐資(極地建築家)
  • 原薫(株式会社柳沢林業 代表取締役社長)
 
【ファシリテーター】
  • 山本達也(清泉女子大学教授)
 

 
 
村上祐資(むらかみ・ゆうすけ)
極地建築家。特定非営利活動法人フィールドアシスタント代表。
1978年生まれ。南極やヒマラヤなど様々な極地の生活を踏査。2008年、第50次日本南極地域観測隊に越冬隊員として参加し、昭和基地に15ヶ月間滞在。
The Mars Societyが計画を発表した長期の模擬火星実験「Mars160」では副隊長に選ばれ、2017年、模擬火星環境、米ユタ州ウェイネ砂漠のMDRS基地および北極圏デヴォン島のFMARS基地で、計160日間の実験生活を完遂。2018年「MDRS Crew191 TEAM ASIA」で隊長を務める。2019年には退役した元南極観測船を活用し、日本で初めての閉鎖居住実験「SHIRASE EXP.」を実施。
「地球の三極」ともよばれる南極・北極・エベレストをはじめ、これまでに積み重ねてきた極地での生活経験は1000日を越える。
容器のイノベーションから地球環境や社会・暮らしのより良いあり方を提案し続けてきた東洋製罐グループとのコラボレーションにより、 「捨てられる」ダンボール製テント「DAN DAN DOME」プロジェクトを展開中。

 
原薫(はら・かおる)
株式会社柳沢林業代表取締役社長。一般社団法人ソマミチ代表理事。
川崎生まれながら、学生時代より「山」「樹木」の世界に惹かれ続ける。1997年静岡市井川森林組合に就職し、林業の道へ。
1999年に長野県に移住し、2003年柳沢林業入社、2013年より現会長より事業承継し、代表取締役に就任。木材生産を中心に新たな林業の可能性を模索中。2017年一般社団法人ソマミチを設立し、「木を使う社会の仕組みづくり」を目指す。
松本市森林再生検討会議座長、松本市基本構想2030市民会議委員、松本シンカ推進会議委員、林野庁林政審議委員など審議会委員多数。
2016年3月、全国の農山漁村地域の次世代リーダーとして期待される女性や団体に贈られる「農山漁村男女共同参画優良活動表彰」の最高賞・農林水産大臣賞を受賞。狩猟免許保有。

 
 
山本達也(やまもと・たつや)
ALPSCITY Lab 代表。信州まつもとエリアのデジタル地域通貨AC payコミュニティ・マネージャー。清泉女子大学地球市民学科教授。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。
「技術と社会変動」に関する政治と政策をテーマに幅広く研究を行う。専門は、国際関係論、公共政策論、情報社会論。
自律・分散・協調型の社会システムにおける中小都市の役割に注目し、テクノロジー(技術)を組み込みながら自然と都市文化とが融合した都市のデザインに関するプロジェクトに取り組む。
20世紀的な大都市の時代は終わりを遂げようとしており、次の時代に面白い都市は、自然環境と都市文化とのミックスこそが重要との信念から、2012年より生活の拠点を長野県松本市に移す。
松本市基本構想2030市民会議座長および松本シンカ推進会議座長、日本工学アカデミー人類未来戦略フォーラム委員、日本学術会議エネルギーと科学技術に関する分科会エネルギーガバナンス小委員会委員品川区環境計画等改訂協議会副会長など。
著書に、『暮らしと世界のリデザイン:成長の限界とその先の未来』など多数。